いくえにもつみかさなり

牛小屋ではいつもメタルだ

アクリルをひたすら切った2021年

本記事はキーボード♯1 Advent Calenderの14日目の記事です。

adventar.org

こんにちは。キムラシンショクバと申します。KEEB_PDや♯俺キーにてたびたび写真を投稿させていただいておりますが、今回はアクリル積層ケースに関する内容です。今まで製作したケースについて、ゆるーくまとめてみました。

1.アクリル積層ケースに興味を持ったきっかけ

きっかけはTALPKEYBOARDさんのブログで紹介されたsesameです。sesameはFR4プレートによるサンドイッチ構造が主流(?)ですが、リポジトリ内にkb-elmo氏がデザインしたアクリル積層ケースのdxfデータが用意されています。

自作キーボードを知って半年を過ぎた当時の私は、このとき初めてアクリル積層ケースというものを知ります。衝撃的でした。まず目についたのは設計です。層を重ねれば立体になるのは誰もが思いつく所ですが、素人の私が見ても明らかに構造が洗練されていることを感じました。このアクリル積層ケースという文化は、多くの検討を経て今の形になっていると思いました。後にQlavier氏がこの構造の基礎を作り、様々なデザイナーにより派生が生み出されていることを知ります。美しい造形物の積み重ねられた歴史を感じました。アクリル積層だけに(?)。

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引用:https://github.com/kb-elmo/sesame

そして数日後、Daihukuさん主催でsesameのGBが行われました。

ちょうどその日の昼休憩が遅番で、運よくtwitterを開いていたのですぐさま参加表明できました。そこからsesameが待ち遠しくてdxfデータを眺めたりしながら気を紛らわしていました。

しかしそんな気休めにもとうとう耐え切れなくなり、DaihukuさんからPCBが届く前にケースを製作するという熱意がすごいのかただのバカなのか、狂気じみた行動に出ます。

アクリルのカットは業者を頼ることも考えたのですが、近場にカインズ工房があり、レーザー加工機をレンタルできる環境があったので自分でカットすることにしました。

当時は不慣れなこともあり、dxfデータをそのままレーザー加工機に読み込ませて*1、線の色も黒のまま、各種パラメータをカット用に変更し実行するという悩ましい客でした(その後店員さんに正しい設定方法を教えてもらい以降はルールを守るようにしています、良い子の皆様はちゃんとルールは守って利用しましょう)。そんなこんなで2日かけてようやく完成しました。完成したケースはとても美しくしばらく見とれていました。

ケース製作にかかった費用は約2万円です。当時を振り返ると、端材が多く残るようなカットをしていたり、段取り良く作業できず思いのほかレンタル料を支払っていたりと、費用としてはかなりかかりましたが、苦労の末に得られたこの感動はプライスレスです😊。このsesame以降、アクリル積層ケースの魅力により一層惹かれていきました。アクリル積層だけに(?)。

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2.fusion360を用いてケースのデザインを始めた

sesameはkb-elmo氏がデザインしたケースデータをそのまま利用しましたが、次に製作するアクリル積層ケースは自分でデザインしたいなと考えました。仕事でsolidworksを使っているので、dxfデータを編集できる環境があればヨシ!ただ、趣味で職場のCADを使うわけにはいかないので、個人PC用の3Dもしくは2DCADを探すことにしました。そして3Dプリントケースや金属切削ケースを設計している界隈の皆様の中に、fusion360を利用している方がいらっしゃったので、私もひっそりとダウンロードしてみました。

約8年前、大学在学中にInventorを使用していたため、ふたたびautodeskのお世話になることになりました。

アクリル積層ケースの設計は基本的に平面図をいくつも描くことになります。その平面図を重ねることでキーボードの筐体が出来上がるので、アルミ削り出しケースのような3次元的な設計と比べると手ごろに設計できます。この手軽さが魅力です。

平面図の作成は、kicadとinkscapeを駆使しても十分事足りるとは思うのですが、前述のとおり私はずっと機械設計用CADを使ってきたので、操作方法も共通していて扱いやすいfusion360を使ってます。あと作成した平面図から3次元モデルを作成しアセンブリできるので、出来上がりの様子やケースの配色が検討できるのも便利ですね。

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平面図にて曲線的なデザインをしているところ。重要な寸法は数値で指示し、拘束も取り入れしながら形状検討することを心がけています。

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fusion360上で出来上がりの様子とケースの配色を確認できます。手持ちのキーキャップとの配色も考えながら、購入するアクリルの色を選んでいきます。最も楽しい作業です。

3.今までの製作物について

ここからは今まで製作したアクリル積層ケースを簡単に説明していきます。

VISION

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keyboard:VISIONSatT氏

アクリル板:ファンタレックス アート カラー A-52M

スイッチプレート:真鍮製(切断堂で発注)

sesameの次に製作したのが、こちらのVISIONのアクリル積層ケースです。VISIONは販売当時あっという間に完売してしまったため、私の中では欲しいけど手に入らないキーボードの一つでした。ただboothにはエクストラPCBが残っており、sesameを製作した今、これはVISIONをアクリル積層ケースで作れというお告げだ!ということで製作をすることにしました。

sesameをはじめ、この頃はTALPKEYBOARDさんのブログが私の情報源でした。そしてHavenstudioQlavier氏を知った頃だったので、私も先人の例に習い、アクリルの間に金属製のスイッチプレートを挟む構造にチャレンジすることにしました。学ぶことは真似ることの精神です。

ただひとつ問題がありました。それはスイッチプレートです。まだPCB設計の経験がなく、kicadも知らなかったので、VISIONスイッチの穴の位置がわからず平面図が書けないのです。(後にSatTさんのリポジトリ内に基盤データがあることを知ります)

さてどうやってスイッチプレートの平面図を描けばいいのか。悩んだ末、VISIONのPCBを買って、地道に寸法を測ることにしました。そして運の良いことに、sesameのスイッチプレートをVISIONのPCBに重ねて穴の位置を確認してみると、おおよその位置が合ってることが分かりました。これはラッキー!sesameのプレートを基準に平面図を作成、外れている箇所はノギス等で寸法を図り、、、、そしてなんとか平面図を作成しました。

ところどころ長穴で誤魔化す雑っぷり。どうしてもVISIONが欲しかったのです。

そして後日、同じくVISIONのアクリル積層ケースを設計・製作したろかさんから、リポジトリ内に基盤データがあることを教えてもらいました。ろかさんが設計されたVISIONアクリル積層ケースのデータはこちらに公開されていますので、興味のある方は是非とも製作にチャレンジしてみてください。

 

②Aleth42

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keyboard:ALETH42monksoffunk氏

アクリル板:ファンタレックス アート 白 A-00M

スイッチプレート:ファンタレックス アート 白 A-00M(アクリル製)

ALETH42は初めて購入した自作キーボードで、実はsesameよりも前に持っていたキーボードになります。OLKB社製Placnkのケースと互換性があるため、購入してしばらくはplanckケースや3Dプリントケースを使っていました。

しかし手持ちのキーボードが徐々にアクリル積層ケースなキーボードになっていくにつれて、打鍵感の好みも移り気していき、ALETH42の使用機会は減りつつありました。

ただ、ALETH42のキー配置は私に最も馴染んでいました。ホームポジションを動かさずにほとんどの文字が打てる、初心者の私に40%配列の素晴らしさを教えてくれたのがALETH42でした。そんなキーボードを「打鍵感が好みでないから」という理由で使用機会が減るというのは悲しかったので、打鍵感の向上を目的に、ALETH42もアクリル積層ケース化することにしました。

スイッチプレートは金属製ではなく筐体と同じ白いアクリルで製作し、スイッチもCreamスイッチからアクアキングに変更しました。結果、打鍵感も滑らかかつ柔らかになり、お気に入り上位に返り咲くキーボードとなりました。

せっかくなのでLEDもつけてみました。LEDとアクリル積層ケースの親和性は抜群ですね。ALETH42のPCBはもう一枚持ってるので、次回は乳白色の半透明アクリルを使って製作してみたいです。

 

③Tenalice-ambidextrous

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keyboard:Tenalice-ambidextrousCerbekos氏

アクリル板:ファンタレックス アート カラー A-14M

スイッチプレート:アルミ製(切断堂で発注)

 



某日

 

Alice配列及びアクリル積層の美しさを教えてくれたsesame

 

40%のすばらしさを教えてくれたALETH42

 

そして40%でありながらAlice配列であるVISION

 

いやー大満足だ!

 

この3台があれば!

 

もうキーボードは!

 

しばらくいらないかもな!

 

キラキラキラキラ

 

おや、あれは

 

何かが舞い降りてきました!

 

!!!

 

ひよこです、、、!


円盤さんが

 

ひよこくんを連れてきました、、、

 

ひ、ひよこくん、、、、

 

私のVISIONキーボードに何か用かい?

 

 

もしや、、、、!

 

それを伝えにきてくれたのかい?

 

ついに、、、、、、!

 

ついにエンドゲームなのか、、、!

 

長かったような短かったような、、、!

 

ありがとう!

 

ひよこくん!!

 

来年もひよこアドカレ頑張ってね!!


俺明日から新しい趣味見つけるよ!!

 

本当に!

 

本当に!

 

ありがとーーーー!

 

 

 

 

 


 

夜7時

 


 

日曜日

 

 

 

 

 

KEEB_PD

 

 

 

 

 

 

ひあああああああああああああ!


なにこれええええええええええええ!


かあっこいいいいいいいいいいいいい!


ぎあああああああああああああああああ!

 

それがTenalice-ambidextrousでした(?)。まさに黒船来航。sesame、aleth42、visonという私の中で勝手に決め込んだエンドゲームを颯爽と破壊し、新たなエンドゲームを探すよう、諭された感覚でした。

Tenalice-ambidextrousは40%Alice配列でありながら、中央にはテンキー部があります。左側か右側のどちらかにテンキーがあるキーボードはいくつか見たことはありましたが、中心にテンキーがあるのは斬新でした。しかも両手でアクセスできかつシンメトリーな配置なため、機能性とデザインが両立されている、まさに独創的なキーボードだと思いました。これは是非アクリル積層ケースを作りたいとCerbekosさんに頼み込み、プレートデータを公開いただきました。

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今回製作したケース、私にとって新しい試みを色々取り入れました。些細な内容ではありますが、私にとっては大きな一歩です。

sesameからTenaliceまでのアクリル積層ケースを製作してきましたが、設計や製造に関する気づきは多くありました。品質とコストを両立させる設計はどうあるべきか、レーザー加工のタクトタイムを短くするために何をすべきか、まだ誰もやっていないデザインや設計は本当に無いのかなど、まだ答えには至っていません。これからもも製作を続けて、悩みながらも楽しくものづくりができたらなと考えています。まだまだエンドゲームではなかった、これからですね😊

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4. おわりに

非常にまとまりのない文章でしたが、自由に楽しく書かせていただきました。来年は新しい試みとして、アクリル積層ケースの魅力を伝えるような何かを発信できればと考えています。2022年も自作キーボードの世界を盛り上げていきましょう。

 

この記事は

sesame(アクリル積層ケース)とVISION(アクリル積層ケース)とAleth42(アクリル積層ケース)とTenalice-ambidextrous(アクリル積層ケース)で書きました。

 

*1:正しく表現するならば、レーザー加工機を外部出力プリンタとして認識しているイラストレータでdxfファイルを開く